第288章

 望月琛が戻ってきたとき、目に飛び込んできたのは、前田南の顔に浮かぶ皮肉な笑みだった。

 胸がズキリと痛む。彼は無意識のうちに大股で歩み寄ったが、その表情には穏やかで気遣わしげな笑みを張り付けていた。

「気分は少し良くなったか? 腹は減ってないか? なにか食べるものでも買ってこようか」

 前田南は首を横に振り、淡々と視線を逸らす。

「提携の話も大体片付いたことですし、他に用事がないのであれば、一両日中に帰国しましょう」

 一刻も早くククに会いたくてたまらなかった。

 以前なら、自分が海外出張に行く際、友人にククを預けることもあった。

 だが、今回ばかりは勝手が違う。

 自分自...

ログインして続きを読む